俳句募集事業HAIKU PROGRAMS
鬼貫顕彰俳句(一般の部) 結果発表
第35回 鬼貫顕彰俳句 発表
郷土伊丹の俳人である鬼貫を顕彰するため、本年も俳句を募集したところ、994句の作品が集まりました。それらの句の選考を行い、鬼貫賞3句、入選15句を決定いたしました。鬼貫賞3句は次のとおりです。
鬼貫賞
稲畑 廣太郎 選
梟のとんで鎮守の闇うごく 横浜市 清水 善和
(選評)結構素っ頓狂な顔つきである梟であるが、鷲や鷹などと同じ猛禽類で、夜行性で狩の名人であるということだ。ただ夜行性故に昼間は却って明る過ぎて視力が極端に低くなるということも聞いたことがある。そんな梟が鎮守の杜を住処として、夜になると我が物顔で飛んで狩に勤しんでいるのである。人も居なくなった夜の鎮守を跳び始めた瞬間からその辺りの闇が、この梟に支配されたように動くという表現に何か神秘的な美しさをも感じる。
久保 純夫 選
くつろぎてひとりとけゆく雪兎 千葉市 千葉 信子
(選評)雪兎は本来、家族や子どもたちの間でそれぞれに作られ、出きばえを自慢し合い、貶し合い、それを楽しむような存在であろう。しかし、この雪兎はひとりで、与えられた現世をやわらかに享受しているように思われる。その底に、ささやかな哀しみ切なさも感じられるが、何よりも死を前にして、ゆるやかにのびのびと孤独を愉しんでいるのだ。それでも最後には目と耳だけを残し、水となって消えてしまう。生死に向けた慈愛である。
朝妻 力 選
なりきりて孫に泣かるる節分会 宝塚市 荒川 芳郎
(選評)節分会とありますので、神社の節分会で鬼の役を仰せつかったのでしょうか。もちろんご自宅の豆撒でも構いません。鬼役の作者。鬼になりきって孫に泣かれてしまいました。この作品、鬼という語を見事に省略しています。鬼と言わずに、誰もが鬼と理解でき、そして泣いているのは一、二歳の子であろうことも分かります。こう思わせてくれるのが余韻。俳句は省略の文芸ということを分かり易く教えてくれる、見本のような作品です。