市立伊丹ミュージアム

HAIKU PROGRAMS

鬼貫顕彰俳句(一般の部) 結果発表

第32回 鬼貫顕彰俳句 発表

郷土伊丹の俳人である鬼貫を顕彰するため、本年も俳句を募集したところ、1,042句の作品が集まりました。それらの句の選考を行い、鬼貫賞3句、入選15句を決定いたしました。鬼貫賞3句は次のとおりです。

鬼貫賞

稲畑 廣太郎 選

朝顔が隣の庭へ咲きにゆく   西宮市  志々見 久美

(選評)庭で咲かせていた朝顔であるが、かなり育ってきてその蔓が塀を越えて隣の家の庭にまで伸びてそこで花を咲かせたのである。よく、木の枝などが隣家に伸びて、苦情を言われる、という問題を聞いたことがあるが、朝顔であれば、そんな苦情も起こらないで何か微笑ましい雰囲気も感じる。何れにせよちょっとしたアクシデントなのかも知れないが、それをまるで朝顔が自分の意志で咲きにいったというニュアンスで表現したのが秀逸である。

宇多 喜代子 選

雑踏に陽性陰性春の月   伊勢原市  髙梨 裕

(選評)「陰性陽性」はコロナの検査結果でしょうか。それともコロナとは関係なく、大勢の人間を陰と陽に二分した感想でしょうか。なにかにつけて黒と白、伝統と革新、と分けてしまうのが世情です。いずれにせよ、対立する陰と陽。それを雑踏という不特定大勢の中に見たという句。やはり今という時代であればコロナ検査でしょう。「春の月」に救われます。

大石 悦子 選

つばめ来るつぐみは帰る儂は居る   松山市  谷 茂男

(選評)春に南方からつばめが渡ってくると、入れ違いのように冬鳥のつぐみは北へ帰って行きます。自然界の普遍の営みに触れた句です。いっぽう、季節のうつろいにかかわりなくどこへも行かないでここにとどまっている自分の存在を、「儂は居る」と言上げしたところを痛快に思いました。世に「男の俳句」「女の俳句」という別がありますが、揚句はまさに「男の俳句」。もしかして鬼貫翁の呟きかもしれません。

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