俳句募集事業HAIKU PROGRAMS
鬼貫顕彰俳句(一般の部) 結果発表
第33回 鬼貫顕彰俳句 発表
郷土伊丹の俳人である鬼貫を顕彰するため、本年も俳句を募集したところ、950句の作品が集まりました。それらの句の選考を行い、鬼貫賞3句、入選15句を決定いたしました。鬼貫賞3句は次のとおりです。
鬼貫賞
稲畑 廣太郎 選
北窓を開けば海は万華鏡 神戸市 岩永靜代
(選評)特に北国では、冬になると北側の窓をしっかりと閉ざして、冬の間は北風に備えるが、今度は春になるとその閉ざされた北窓を久し振りに開いて春の日や風を通すのである。開かれた北窓の果てには日本海が広がっているように想像出来るが、すっかり明るくなった春の海を満喫している作者の姿が見て取れる。冬の間は暗く怒涛の日本海も、すっかりその姿を変えているのである。「万華鏡」の措辞が季題の明るさをこの上なく引き立てている。
久保 純夫 選
蓮の葉に雨は形を結びけり 川口市 清正風葉
(選評)水が静止するとき、そのかたちは常に器に従って存在する。雨が蓮の葉に落ちたあとの結ぶ形とはいかなるものか。情景を想像すれば、光の粒を大きくしながら、低いところで、永遠に揺れている。同じ台、ということだ。
津川 絵理子 選
そんな口元だったんだ花吹雪 丹波篠山市 堀毛美代子
(選評)新型コロナの流行がようやく終息し、人々はマスクを外し始めた。初めて素顔を知ったという経験は、誰しもあっただろう。改めてその人と出会ったような気持ちになったのではないか。新鮮な驚きを、そのまま軽やかに俳句にした。それは案外難しいことだ。季語の斡旋にも作者の力量を感じた。何十年も経ったら、前書がなければ分からなくなるかもしれないけれど、今年の、今現在の実感をさらりと表現したところに惹かれた。