市立伊丹ミュージアム

HAIKU PROGRAMS

鬼貫顕彰俳句(一般の部) 結果発表

第34回 鬼貫顕彰俳句 発表

郷土伊丹の俳人である鬼貫を顕彰するため、本年も俳句を募集したところ、968句の作品が集まりました。それらの句の選考を行い、鬼貫賞3句、入選15句を決定いたしました。鬼貫賞3句は次のとおりです。

鬼貫賞

稲畑 廣太郎 選

天空を叩いて渡り鳥風に   岡崎市  和田 陽子

(選評)秋になると北国から日本へ、鴨などの冬鳥が渡ってくるようになる。一言で「渡る」といっても、その旅は尋常なものではないだろう。多くの鳥が日本を目指して飛んでいる間は様々な試練が待ち受けているのである。その為には鳥も強靭な体力を備えていなくてはならないのである。そんな強靭な羽搏きが「天空を叩く」という言葉に凝縮されている。そして最後の「風に」で止めているところにこの句の余韻が伝わってくるのである。

久保 純夫 選

美しきをのこ二人の韮雑炊   橿原市  猪熊 さき代

(選評)このをのこは、男か男の子か。韮雑炊を食べているのだから、男なのだろう。その二人が美しい、という意識は向き合うお互いのものか。二人以外の人間か。この美は、作者の意識にかかわらず、これまで民衆を支配してきた概念・制度を否定している。古来より、美は性を限定しているわけではない。近年のジェンダーフリーを持ち出すまでもなく、人間本来の性の部分を表象している。韮雑炊が、をのこ二人を限りなく、美しくしている。

朝妻 力 選

つばめ飛ぶ空をはみだしさうに飛ぶ   神戸市  酒井 多加子

(選評)〈空をはみだしさう〉に引かれた一句。空を辞書で引きますと「地上に広がる空間」とあります。つまり見える範囲すべてが空であるということでしょう。見える全てが空であるのに、しかもその空をはみ出す……。理論的には当然ながらあり得ないことです。そのあり得ないことを感じたが〈空をはみだしさう〉という把握。初燕でありましょうか。日本の空に来たことを、飛べるということを全身で喜んでいる。こんな燕を感じました。

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