松原武雄展ー名のない領域 Takeo Matsuhara: By the non-existence of things
2003年9月13日(土)ー10月19日(日)
兵庫県伊丹町(現伊丹市)に生まれた松原武雄(1912~、現在国画会会員)は、戦後から現在に至るまで真摯に抽象絵画に取り組んできたモダニズムの画家です。旧制中学卒業後、中之島洋画研究所でデッサンを、次に林重義の下で徹底した写実を学びました。やがて第二次世界大戦に従軍、戦地で終戦を迎えます。
戦後しばらくは風景画や人物画を制作しますが、画面は次第に構成的になり、抽象絵画への興味とともに1954年頃から独自の画風を探求するようになりました。水平のカンヴァス上に落としたエナメルが、自然のままに広がり、互いに重なり合ってにじみをみせていく。最初の「落とす」という行為のみが作家に依存するのであって、カンヴァスには有意的な痕跡は存在しません。さらに近年では、何もない空間の上に日用品をコラージュするという、新たな展開をみせています。
感情の吐露を極力排除する姿勢は、老子が唱えた「無之以為用」(何もないことが実は本当に役立つのである)の、まさに絵画による具現化だといえます。約80年以上にも及ぶ実直な活動を経て、90歳を越えた現在もなお精力的に制作する姿に、見るものは大いに刺激を受けることでしょう。新近作11点からなる清新な絵画の世界をお楽しみ下さい。
展覧会情報
会期 | 2003年9月13日(土)ー10月19日(日) |
会場 | 伊丹市立美術館 |
休館日 | 月曜日(但し祝日開館・翌日休館) |
開館時間 | 10:00〜18:00(入館は17:30まで) |
入館料 |
一般300(240)円/大・高生200(160)円/中・小生100(80)円 |
主催 | 伊丹市立美術館、(財)伊丹市文化振興財団 |
同時開催 | 美術館常設展II 「メッセージ」 柿衛文庫特別展 「没後220年蕪村ー逸翁美術館・柿衛文庫にみる」 |